●河合隼雄さんの講演(2)

次に、カウンセラーとは、全体の“ヨミ”(ユングのいうコンステレーションConstellation:夜空に浮かぶ星座のこと。心理学用語としても使われ、「布置」と訳される。星と星とを繋ぐパターンが星座であるのと同様に、自分と周囲との間にできている心理的な関係性のパターンを指す。)が重要な職業で、原因と結果の考えを捨て、縛られない心になり、「ただ、いるだけ」の状態にしていると、何もしなくてもその場は変わってくる。「全体をヨミながら、そこにいる」専門家であるということ。河合さんが高校教師の頃、学生理解のために始めた心理学。留学生となって米国でユング研究をやりたいと思った一番の考え方は、「シンクロニシティSynchronicity(ユングが提唱した共時的現象であり、複数の出来事が非因果的に意味的関連を呈して同時に起きること)」だということ。ある現象は、因果関係はないが、一緒にあるいは同時に起こることに意味を感じることがあるという。そして、スイス留学中、河合氏は自身について、「あまりにも女性性が強い」という認識を持ったこと等が印象に残った。カウンセラー、臨床心理士、心理療法家、そしてヒーラー。これらの職業というのは、傍から見れば理解しがたい仕事だと思う。助けを求める人は目に見えた、形のある効果を期待して求めている。それに対して、「ただ、そこにいるだけ」ということに耐えられるものなのだろうか? 職業として成り立つのだろうか? コンサルタントではなく、カウンセラーという仕事に納得して従事するというプロ意識は、どこからくるのだろう? 成果主義的なサラリーマンには、理解不可能では? 心理学系の勉強は誰でもできるけれど、現場でこれらに従事する人、できる人には、“適性”が備わっているような気がする。ただ、そこにいるだけで、心が開いて癒されるような。私は男性性が強すぎるので、癒されることを味わうことから再開だ。

山王教育研究所
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